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抗インフルエンザ薬、ゾフルーザ®耐性株問題に思う事

[2019.11.30]

 痛い思いをしながら注射を打ち、予防したはずなのに高熱にうなされ、鼻には棒を突っ込まれる。家族からは隔離され、お薬を飲めばやれ異常行動だの、耐性株だの・・、これが毎年のことだから辟易してしまいますよね。

 

 死亡リスクが低い病気なら放っておきますが、毎年本邦だけで数千人が関連死するとなるとそうもいっていられません。そこでまず “敵を知り”ではないですが、インフルエンザウイルス(以下INF)に関する基本的な話をしたいと思います。

 

 INFは、1本鎖のRNAという遺伝情報をもったタンパク質を膜タンパク質が包むシンプルな構造をしています。シンプルであるが故に、増殖が早い(1個のウイルス粒子に感染すると、24時間後には1万個に増える)、変異しやすいという特徴を持ち、そのことが私たちを悩ませる要因になっています。

 

 抗INF薬は、その作用機序により大きく3つに分別されます。

 

1)宿主細胞内に入ったウイルスが、中身をバラまくことを阻害する薬

2)宿主細胞内で増殖した子孫ウイルスが出て行こうとするのを阻害する薬

3)宿主細胞核内で遺伝情報を複製するのを阻害する薬の3つです。

 

 1)はシンメトレル®という製品名でパーキンソン病の治療にも使用され、抗INFでは最も古い薬です。2)はタミフル®、リレンザ®、イナビル®、3)がゾフルーザ®になります。

 

 現在その耐性株が問題となっているゾフルーザ®ですが、そのほかの抗INF薬にも耐性株が出現しており、シンメトレル®に至っては100%(つまりもう抗INF薬としては効果なし)です。2)は現在一番使用頻度が高い治療薬であり、INFの性質を考えると今後耐性株が急増することも予想されます。

 

 そのようになった場合、3)が切り札になるはずですが、すでに2)よりも耐性株出現率が高いと報告されています。作用機序からも画期的な薬剤だとは思いますが、今後のパンデミックを想定した場合、現時点ではゾフルーザ®の使用頻度を控える事が望ましいかと私見ながら思います。

 

 当クリニックでは、そのような理由から、抗INF薬の第一選択としては、2)を使用していく予定です。

 

 

 

 

 

 

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