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オンライン診療に思うこと①

[2020.05.30]

 ‟こんにちは、体調はいかかですか?“ ‟はい、お陰様で血圧も安定していて体調変わりません” ‟よかったです、では前回と同じお薬を出しておきます。体調の変化があれば、またいつでもご相談ください。“

 コロナ禍で、電話診療を含めた遠隔診療の条件が緩和され、このようなやりとりが多くなりました。感染による重症化リスクの高い高齢者や、基礎疾患を有する方には、来院することへの不安感が軽減できるため、患者さんからの評判も良い印象です。オンライン診療に関しては、それを推し進めようとする国(特に財務省)や保険者側と慎重な医療者(特に医師会)の間でこれまで激しいやりとりがあり、厳しい条件が付いていたため、施設や対象患者さんも限定されてきました。しかし今回の新型コロナ感染症を契機に、期間限定的ではありますがオンライン診療の条件緩和がなされました。コロナ後に元の状態に戻ることは、時代の趨勢からも考えにくく、オンライン診療は段階的に進んでいくと思われます。

 オンライン診療に対する私の立場はどちらかと言えば慎重派です。それは、オンライン診療では、多くの患者さんとの間で充分な‟対話“がなされないのでは、という懸念がどうしても拭えないからです。先月号でご紹介しました‟わかりあえないことから”の中で作者は、‟対話とは異なる価値観や背景を持った人との価値観のすりあわせや情報の交換“と定義しています。つまり信頼関係が構築できていない間柄で先程の電話で行われたような‟会話”をいくら重ねても、価値観をすり合われることはできません。高血圧など慢性疾患に対する医療とは、時間をかけながら、医師-患者間で価値観をすり合われていく作業そのものと考える私には、オンライン診療は対面診療で足りない部分を補完する道具としか、今の時点では思えないのです。

 誌面に限りがあるため今回はここまでですが、次号ではもう少し突っ込んでオンライン診療に関し、お話させていただこうと思っています。

 

 

 

 

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