心臓と血圧の深い関係
高血圧と言われたけども何も症状はないのだけど…とか、高血圧は治療しなくてもよいと本に書いてあった…とか、何かと治療する・しないの論争が絶えない『高血圧』ですが、実際に高血圧と診断を受けた方の約半数(数にして約2000万人)は未治療という現実があります。高血圧はどうして治療が必要なのかを理解するには、そもそも血圧が何かを理解する必要があります。心臓に負担をかけないためには高血圧にならないように普段の生活から気をつけようとよくいわれます。
血圧(ここでは動脈圧を指します)は、そもそも血圧がなにかというと、心臓から送り出された血液が体の隅々の細胞に行き渡るために押し出す圧力のことを指します。体内に張り巡らされた血管の総延長は何と約10万キロ(地球を2周半)になるといわれ、一旦心臓を出た血液が再び心臓に戻ってくるまでにかかる時間は約30秒であることが判っています。そのように広大な血管網の中を素早くあの粘調な血液を循環させるためには、高い圧力が必要であり、その圧力の大部分を生み出しているのが心臓です。その圧は、血液を約2mの高さまで吹き上げるほどのものであり、心臓は一日約10万回もそれを繰り返していると考えると、その仕事量の大きさは想像に難くないと思います。
例えば、血液がスムーズに流れているとき、体の末梢まで血液を届けるのに必要な圧力が130mmHgだとします。ところがなんらかの理由で血液が流れにくくなると、その圧力では末梢まで血液が届かなくなります。そうなると血液を押し出す圧力を140mmHg、150mmHg……と、どんどん高くする必要が生じてきます。
このように血圧の高さというのは、心臓の仕事量に大きく関与することが判っていただけたと思います。高血圧症は、血圧が高い状態が慢性化(常態化)している状況であり、それはすなわち心臓がより強い力で血液を送り出さなければいけない状態が長く続いている状態です。強い力で血液を押し出さなくてはならない仕事量が多い状態が長く続くと、それだけ心臓には負担がかかります。高血圧が心臓によくないといわれるのはそのためです。
健診や病院での診察で医師から血圧が高いと指摘を受けてもあまり気に留めていなかったり、気になる症状がないからと放置している人も多いかもしれませんが、説明したとおり高血圧は心臓や血管にじわじわと確実にダメージを与えるため決して軽視してよいものではありません。