新型ウィルス感染症は医療を変える?
“1年後ならある程度予測できる”と今年始めのブログで見得をきりましたが、今回の新型ウィルスによる影響の大きさに、早速前言撤回するはめになりそうです・・。
今から約100年前、“スペイン風邪”と呼ばれるインフルエンザウィルスのパンデミック(世界的大流行)が起こり、日本でも3年間で全人口の約半数の方が羅患し、多くの人命が失われました。
このように多くの人命を奪ったスペイン風邪から世界が学んだのは、感染症にかかった個人を隔離したり個人の責任にしたりしても、パンデミックの拡散を防ぐことはできないという事実でした。パンデミックを防ぐためには個人単位ではなく社会単位で情報の共有やスムーズな対応を行うことが必要であり、また、被害を最小限に抑えるためには、流行している病気の性質や羅患原因を解明することが重要なのです。このようなことから誕生したのが「パブリックヘルス:公衆衛生」のコンセプトです。
1920年代になり多くの国家がこのパブリックヘルスという発想を取り入れるようになり、従来の医療制度に改革が起こり始めました。さらに、感染症は国境を超えるため、パブリックヘルスを実現する国際的な組織を作る必要がありました。そうして誕生したのが、現代の「WHO(World Health Organization)」の先駆けとも言える団体でした。
今回の新型ウィルス(COVID-19)が私たちの暮らしにどの程度まで影響するのか、様々な憶測が多くの方の不安を生んでいますが、はっきりわかったことは今の私たちの医療システムが、いやそもそも社会全体のシステムがいかに脆弱なものかということです(患者さんは医療機関に受診しないと、検査や治療を受ける事ができないどころか、自分のカルテも持つ事ができないため、国から自宅待機と言われても不安しか生まれない!)。公共が、もしくは医療機関が個人の健康を管理する時代から、個人個人が自身の健康を管理し、そのデータを医療機関が管理、適切な治療を指導していくという、“パーソナルデータヘルス”の時代への大きな転換期に私たちはいるのかもしれません。