捲土重来を期す
先日、福井市のある居酒屋さんが、今回の新型コロナウイルスの影響で倒産したというニュースを聞き愕然としました。この状況で倒産する飲食店が出てくることはあり得る話ではありますが、実はその居酒屋オーナーと私たちとは面識がありました。
5月連休明け緊急事態制限で列島中に緊張が走る中、私たちクリニックスタッフも不安を感じながら診療していました。中でも受付事務は医療スタッフとは言え感染症に対する知識は一般の方と同じで、風邪症状の方と対面で接することへ強いストレスを感じており、どのように対処するか悩んでいました。
そんな折、飛び込みでクリニックへ来院され、お困りでしょうとアクリルのパテーションを作っていただいたのがその居酒屋のオーナーでした。
聞けば、コロナ禍で医療現場が疲弊していることを知り、何か行動しなければということでパテーション作成を思いつき、近隣のクリニックを周っているとのことでした。その誠意ある行動に感銘し、落ち着きましたらクリニックのスタッフと会食に行きますとお約束していただけにとても残念な気持ちです。
有事には人の正気は乱れがちになり、愚痴や誹謗中傷が横行します。あの西郷隆盛をして‟真に尊敬すべきは東湖なり″と言わしめた幕末の学者藤田東湖は次のような言葉を残しています。
「国難襲来す 国家の大事といえども 深慮するに足らず。深慮すべきは 人心の正気の足らざるにあり」
コロナ禍でも正気を乱されることなく、自身の志で行動されたそのオーナーは、捲土重来を期して復活されると確信しています。