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「適度な血圧」とは?(前編)

[2025.10.08]

 高血圧が心臓に負担をかけることは分かったけども、その適度な圧には個人差があるのでは?と思われる方もいらっしゃるのではないのでしょうか。実際診療をしていると、高血圧治療に疑念を持つ方の多くからこのように質問を受けます。

 たしかに血圧の高さは、さきほど述べた血管網の大きさにも規定されるため、体の大きさ(サイズ)によって適正値は変化すると考えられます。ただここでいうサイズの大小は、ネズミとヒト、ヒトとゾウなどのサイズ感であり、ヒトとヒトの間のサイズの大小は高々数 mmHg程度の違いであろうと推定されます。

 適度な血圧とは具体的にどのくらいかを考えるとき、考慮しなければいけないのは加齢による変化です。さきほどの章で、血液を循環させる大部分を担っているのが心臓という話をしましたが、それ以外に血管の弾性力や骨格筋の筋肉ポンプの力も血液の循環をスムーズに行うため重要な要素になります。歳をとると血管の弾性は失われ、筋肉量は減っていき、それに伴い血液が循環しにくくなることによって必要な血圧も変化します。

 これらのことを踏まえた上で、適度な血圧を決める必要があります。それを決める根拠の元となるのが疫学研究です。高血圧や高血糖といった状態は、基本的にはそれがある程度長い期間(数年以上)続くことで、心臓疾患や脳血管疾患、慢性腎臓病といった病気が高率に発症します。

 疫学研究の例を一つあげると、人口が数万人規模で、全国平均的な年齢構成を持つ都市があるとします。その都市に住んでいる方の血圧や血液のデータを毎年毎年蓄積していって10年間経過を見た結果、心臓・脳血管疾患を発症された方が数百人みられたとします。その方々が発症前にどの程度の血圧をどのくらいの期間有していたか、発症されなかった方と比べてどうかをみることで至適な血圧値や血糖値を推し測るものです。

 そういった疫学研究を複数合わせることで、ある程度至適な血圧値を絞り込むことが可能になります。この結果どうも(安静時収縮期)血圧が120~140mmHg程度が至適血圧と分かったとします。ではさらにそれが正しいかを判断するために、今度は血圧140以上の方をそれ以下にすることで疾患発症率を下げることができるかを調べます。このような研究を介入研究といい、この結果、たしかに140以下に管理できれば疾患発症率が下がることが確認されれば、至適血圧として確からしいと判断できるのです。現在定められている血圧の正常値というのは、そのような疫学研究、介入研究をいくつも行ってきた結果であります。

 

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